先日、何気なくスマホをいじっていると、東京大学教養学部の卒業式で、学部長の石井洋二郎さんが卒業式に送った式辞がでていました。

僕は東大に行ったことも、入ろうと思ったこともないので、どんな所かまったく想像できませんが、石井洋二郎さんのお話には「お、なるほどね」と上から目線で納得できる部分があったので、今日はあなたにその話をシェアしますね。

そもそも、何の話かというと、1964年の3月に当時の総長であった経済学者の大河内一男さんという方が

「肥えた豚より痩せたソクラテスになれ」

という言葉を卒業式に残したそうなんです。

で、この言葉は今でも名言として語り継がれているんですって。でも、石井洋二郎さんいわく、この名言には3つのウソがあるというわけです。

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第1のウソ

大河内一男総長が考えた言葉ではない

なんか名言って、その人の人生経験とか、体験からギューっと絞り出された言葉だからこそ、重みや深みを感じられたりするじゃないですか。

でも、この名言。実は大河内総長が考えたんじゃなくて、19世紀イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルさんの「功利主義論」という論文からの借用だったんですって。

「もしして、それったパクリ…」

って思うじゃないですか。

でも、それは違くて、式辞の原稿を見てみると、「昔、J・Sミルは…」という主語がちゃんと書かれているそうなんです。というわけで、これは「パクリ」ではなく、正当な作法に則った”引用”ということになるわけです。

ようするに、当時のマスコミが勝手に勘違いをしたということなわけです。

第2のウソ

J・Sミル自身も言っていない

実はさっき紹介した「功利主義論」には、この大河内総長言った名言はどこにも書かれていないそうです。

「え、でも借用したんでしょ」

って思ったあなたはとってもスルドイ。

同じ言葉ではありませんが、似たような言葉あるそうです。それがこれです。

「満足した豚であるより、不満足な人間である方がよい」

「満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスである方がよい」

ま、ようするに、大河内総長はうろ覚えだった言葉を、自分なりにアレンジしてしまったわけですね。

第3のウソ

大河内総長はこんなこと言っていない

「はぁ?」と思うかもしれませんが、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際に言っていないらしんです。

緊張して忘れてしまったのか(東大の総長が緊張などしないと思いますが…)あえて、読み飛ばしたのかわかりませんが、とにかく、こんなことは話していないわけです。

でも、どういうわけか、原稿だけがマスコミ流れてしまって、言ってもいないものが言ったようになってしまった。というのが事の真相らしんです。

というわけで、東大総長が卒業式で話したとされた名言は、実はウソばっかりだったというわけです。

で、ここから大事な部分です。

インターネットの情報の大変はウソ!?

この話を踏まえた上で石井洋二郎さんはこんなことも言っています。

「まず、みなさんが毎日触れている情報、特にインターネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思ったほうがいい」

「そして、あやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽の程を確かめようとしなくなります」

だいぶ、端折って書きましたがなんとなく伝えたい事は伝わったと思います。

簡単に言うと、なんでも情報を鵜呑みにしないで、自分で調べて、腑に落としこんでから行動しなさいと言っているわけですね。

世の中に正解なんでない

あなたはマッキンゼーという会社を知っているでしょうか?きっと名前くらいは耳したことがあるかもしれません。

言わずと知れた、アメリカに本社を置くコンサルティング会社です。ちなみに、日本支社は、六本木の森タワーにオフィスを構えているそうです。

で、そのマッキンゼーですが、僕が聞いた話によると、企業がコンサルティングを頼むと普通に1回3000万とか5000万とか請求されるんですって。

もちろん、事業規模にもよりますが、僕たちは一般ピーポーでは考えられないくらい高額なわけです。で、そんな高いお金を払うし、アメリカのコンサルティング会社だし、頼めば絶対にうまくいくって思うじゃないですか?

でも、日本の企業がコンサルティングを頼んでもほとんどの場合うまくいかないんですって。ちなみに、アメリカの会社は、マッキンゼーにコンサルティングしてもらうとほとんどの場合うまくいきます。

超一流のコンサルティング会社に頼んでも、うまくいかない日本の企業とうまくいくアメリカの企業。その違いって何だかわかりますか?

すべては初期仮説

もちろん文化の違いもありますが、日本の企業は…

「あのマッキンゼーが作ってくれた戦略だ」
「絶対にうまくいくに違いない」
「いや、3000万も払ったんだからうまくいかないと困る」

って考えます。で、結果はどうか?というと…

「ちーん…」

「全然うまくいかないじゃん」
「高い金だけ払って損した」

ってなるわけです。

でも、アメリカの企業が違います。

「よし、マッキンゼーに戦略を作ってもらったぞ」
「素晴らしいものにちがいないけど、1度試しにマーケットに出してみてテストしてみよう」

と、初期仮説と考えるわけです。

なので、1度や2度の失敗は当たり前って思っています。

テストを繰り返して、改善してけばいいじゃんって考えているわけです。ですが、日本の企業はマッキンゼーに作ってもらった戦略が「答え」だと思っています。

なので、一度マーケットにだしてみて失敗すると…

「なんだよ!」
「だめじゃん!!」

ってチャンスを無駄にしてしまい成長しないわけです。

石井洋二郎さんも言うように、ネットの情報はウソが多いわけです。そこに書かれているものは正解ではありません。あなたの前にポンっと出されたものを答えだと思ってしまうと、脳は考えることを放棄してしまいます。

こんな世の中のだからこそ考えて、考えて、考えて、試行錯誤することが必要だったりするわけです。

すべては初期仮説。

このことを忘れないでください。